ウルトラバイオレットと聞くと、”ウルトラソウル”や”セクシャルバイオレットNo.1”といった、シャウト系のJ-popがあるが、どちらを思い浮かべるかである程度年齢が想像できる。
ところでウルトラバイオレット、つまり紫外線にはUV-A、B、Cと3つのタイプがあり、私たちの生活に影響を与えるのはUV-AとBである。これらはともにお肌の大敵でよくご存じの方も多いことと思う。
今回はUV-Bに関して触れさせていただく。
しばらく前からイチゴにUV-Bを照射するとウドンコ病を抑えることができ(神頭ら, 2011),
これ以外の野菜ではキュウリ(岡田・岡, 2014)、花きではイチゴと同じバラ科のバラ(Kobayashi et al., 2013)にも同様の効果があることが報告されている。
私はUV-Bの効果は人間でいうと「乾布摩擦」。
つまりUV-Bでイチゴの体を鍛え、ウドンコ病が付かない体にすると思い込んでいた。
さすがに、イチゴ生産者の方に説明する際に「乾布摩擦」はイメージはしやすいが、すこし「違和感」を感じたので、科学的な根拠を探した。
調べてみると、PRタンパク質(pathogenesis-related protein)という、植物が病原体に感染した際にそれに抵抗するために生成されるタンパク質を作り出し、ウドンコ病に対する抵抗性を高めるためであることがわかった。(第1図、Kanto et al., 2009、神頭ら、2011)。
UV-Bは植物体内で遺伝子レベルでの変化を起こしている。
これに加えて、アントシアニン色素を合成する遺伝子の発現を促すために、果実の着色促進効果も期待できるかもしれない(Kanto et al., 2014)。
現在、UV-B蛍光ランプが販売され、多くのイチゴ生産者のIPM技術(総合的病害虫管理技術)の一環として着実に定着しつつあることを考えると、病害虫の総合的防除には10a当り50‐60万円の投資は必要と言われているが、その価値は十分あるようである。(UV-B蛍光ランプは三好アグリテックでも好評販売中)
ところで、UV-Bとは多かれ、少なかれ私にもご縁がある。子どもが生まれた直後に新生児黄疸があり、光線(UV-B)療法をしてもらった。本記事の執筆で、こどもを初めて抱っこした時の感動を思い出した。
引用文献
Kanto et al. 2009. UV-B RADIATION FOR CONTROL OF STRAWBERRY POWDERY MILDEW. Acta Hortic. 842: 359-362
神頭ら. 2011. 紫外光(UV-B)照射によるイチゴうどんこ病の防除. 植物防疫65(1): 28-32
Kanto et al. 2014. A new UV-B lighting system controls powdery mildew of strawberry. Acta Hortic. 1049: 655-660.
Kobayashi et al. 2013. Supplemental UV radiation controls rose powdery mildew disease under the greenhouse conditions. Environ. Control Biol., 51(4) : 157-163
岡田清嗣・岡久美子. 2014 UV-B照射によるナス科作物の病害防除. 植物防疫68: 58-65.