4月というと異動の季節。私も異動族の仲間の一人で、新しい職場に赴任して、気分は新人だが、見かけはベテラン。大型新人と期待をされることもあるが、その期待に応えることができるか?
その結果は時間が証明してくれる。
自宅に帰ってくると娘がテーブルに楽譜を広げていた。サカグチは音楽に関しては浅学菲才。こういう風に書くと音楽だけが苦手のようだが、苦手なものがいっぱいあるのも事実である。
音楽の話にもどるが、「同じ楽曲の演奏なのに指揮者によって違うよね。指揮者が好きなところでアレンジしているの?」と娘に聞いたところ、「楽譜には音楽用語というものがあり、その用語を元にそれぞれの指揮者の解釈によって、強い表現と弱い表現などで異なる」と言う。
指揮者を言い換えれば、栽培者とも言えるとサカグチは考える。
気温一つとっても、ハウス内の気温データを睨みながら、栽培者の感性によって強弱をつけているはずだハウスの気温をよく見るが、センサーの取り付け位置で各ハウス内への日射や逆に日陰になるなどによりかなり影響を受けていることがよくわかる。
このような状況でハウス内気温を・・℃に管理していると自信をもって言えない。だいだいこんな感じで気温管理をしていると、人同士の話ではおおよそ通じるのでよいが、植物ファーストで考えると、実際、植物たちがどんな環境におかれているかは理解できていないことになる。
うーん。なんかこの状況に似ているものがあるなあと思っていると、「時刻」に通じるところがある頭の中に浮かんだ。時刻を示す各人の腕時計それぞれを見比べると若干誤差があるように思うが、この誤差は許容され、実際は大きな影響はない。また時刻には標準時というものがあるが、気温についてはどうであろうか?
これについてはYesである。環境条件による影響を受けづらく、耐久性があり、かつ精度を高く気温を測定することは可能である。
第1図の示す強制通風菅というものを使う。これは強制的に風を送り、センサーに熱をもつのを防ぎ、空気自体の温度を測定するもの。
今回紹介したものは、気象庁やアメダスのルーチン観測用として採用されている強制通風菅と比較して遜色ないものを、福岡ら(2011)が自作できるようにホームセンターで材料を揃えることができるように設計したものである。
いずれにしても正確な気温データを入手はできるが、入手するのが大切ではなく、どう利用するのかが重要である。指揮者であるあなたは、気温データという楽譜をみて、どう解釈し、どう奏でるのか?
解釈の違いで、作物に特徴がでるのは、指揮者とまったく一緒だね。
ところで、たくさんある音楽用語の中で、サカグチが知っているのは「フォルテッシモ」激しく、昂る夢をねむらせるな!というフレーズはいつ聞いても心を揺さぶられる。
引用文献:福岡ら. 2011. 建築資材を活用した低コスト強制通風筒「NIAES-09」の製作法. 生物と気象 (Clim. Bios.) 11: A10–16.